介護人材危機” 〜働く私たちが今できること

日本は今、世界でも類を見ない“超高齢社会”を迎えています。
介護を必要とする人はますます増える一方で、介護を支える人材は足りない――
この現実は「いつか親の介護をするかもしれない」働く私たちに、確実に関わる問題です。

産業ケアマネとして、介護の現場・職場・家庭を支援する立場から、
“今知っておきたい介護業界の実態”をお伝えします。

人手不足”が介護の質を揺るがす

介護業界の人材不足、いま何が起きているのか

介護現場では、2025年に約32万人の介護職員が不足すると推計されています(厚生労働省)。
さらに2040年には69万人の人材が必要とも言われ、状況は深刻さを増しています。

現場では

  • 職員が1人で複数の利用者を担当
  • 忙しさのあまりケアの質が維持できない
  • 夜勤や休日勤務の負担が大きく、離職が続く
    といった負のスパイラルが広がっています。

「もっと話を聞いてあげたい。でも、時間がない」
「一人の職員に求められる仕事量が限界を超えている」

そんな現場の悲鳴が、介護を必要とする人だけでなく、
その家族にも負担として跳ね返っているのが実態です。

“介護離職”という社会課題

年間10万人が介護離職している

働く世代にとって、親の介護は突然訪れる“人生の転機”です。
日本では毎年約10万人が介護を理由に離職しているというデータがあります(厚生労働省「介護離職者数」)。
希望する介護施設の空きがない、在宅サービスの人手が足りない――
そんな状況が、働く人を「家で介護するしかない」という選択に追い込んでいく可能性があります。

介護離職の問題は、本人のキャリアだけでなく、企業にとっても「人材流出」という経営リスクです。

「親の介護が始まったら、自分の働き方はどうなるのだろう…?」
「辞めたくないけど、介護と両立できる気がしない」

産業ケアマネとして私は、多くの働く人からこのような不安の声を聞いてきました。

でも、介護は「その時」になってからではなく、今から情報を知り、相談し、備えておくことで“辞めなくて済む”未来を作ることができるのです。

“介護は一人で抱えない”という選択

未来の自分を守るために、今からできること

人手不足が続く介護の現場では、
「サービスがすぐに使えない」「必要な支援が受けられない」
という状況が、これからさらに増える可能性があります。

でも、だからこそ「一人で抱え込まない介護」を広げることが大切です。

今からできる備えとして――
✅ 親と一緒に「もしもノート」「エンディングノート」を書く
✅ 会社の産業ケアマネや上司、人事労務に相談しておく
✅ 介護保険や地域包括支援センターの仕組みを知る
✅ 家族会・介護セミナーに参加する
など、“小さな一歩”を始めることで、未来の自分が「助けられる瞬間」が増えます。

「あの時、相談しておいてよかった」
「“知っている”というだけで、心の余裕ができた」

こんな声を、私は現場で何度も聞いてきました。

だから、あなたにも伝えたい。
「介護は、いざ始まった時に“ゼロから考える”のでは遅い」
「未来の自分と家族を守るために、“今”から動き出そう」

まとめ

✅ 2025年には32万人、2040年には69万人の介護人材不足が見込まれている
✅ 年間10万人が介護離職しており、働く人・企業にとっても無関係ではない
✅ “一人で抱えない介護”のために、今からできる準備がある

「親の介護」「自分の働き方」――
どちらも大切にするために。
介護を“自分ごと”として考える、今日という日にしませんか?

投稿者プロフィール

後藤利英
後藤利英
大学卒業後、営業職・飲食業をへて介護業界へ。ホームヘルパー2級を取得後にグループホームでキャリアをスタート。
介護福祉士を取得し病院、ケアマネージャーを取得して老健・居宅支援事業所で働き、15年間の経験を元に、昨年7月株式会社介護屋ごとう、本年2月からはワントップパートナー札幌麻生店を設立。