声を届ける介護〜遠く離れた親とつながる時間〜

こんにちは!
産業ケアマネの辻です。

本日は、先日友人から聞いた話を元に、遠距離に住む親の介護について考えたいと思います。

週に一本の電話が父の支えに

「毎週だいたい決まった時間に、父に電話してるねん。普段姉に任せきりやから、それが今の私にできる親孝行かな」

そう話してくれたのは、料理教室を主催し女性起業家として活躍されている私の友人です。

彼女の実家は地方にあり、数年前に母親が亡くなってから、父親は一人暮らし。
近所に女性の姉妹がおられ、時々様子を見に行ってもらっているそうですが、やはり父親のことが気になるとのこと。

「でもね、すごく元気やねん。毎日畑に出て野菜を育てて、出来た野菜を親戚に配って回るんやって(笑)」と、明るく話してくれました。

私はその後に続いた言葉が、ずっと心に残っています。

「お父さんね、毎週の電話がほんとに楽しみらしいの。電話したら必ず長電話になって、それもずっとお父さんが喋ってるねん、その話がめちゃめちゃ面白くって」

彼女は笑いながら話してくれましたが、私はその話に胸を打たれました。

一方的な会話にも見守りのヒントがある

彼女が言うには、電話のほとんどお父さんが一方的に喋るだけ。
「最近はきゅうりができてきた」「近所の〇〇さんは入院してるらしい。わしより若いのにな」といった畑や地域の話が中心で、自分はほとんど相づちを打っているだけだそうです。

けれど、それでいいのだと思います。
むしろ、その一方的な会話にこそ、親の“日常”が詰まっていて、変化を察知する大切なきっかけになります。

話のテンポや声の調子、言葉の選び方や内容の繰り返し――どれも親の心身の状態を知る手がかりになります。
「最近、同じ話を繰り返すようになった」「声のトーンが前より弱い気がする」
そういった小さな変化は、週に一度でも定期的に声を聞くことで、自然と気づけるのです。

娘を思う父と、父を思う娘

女性のお父様は、お母様が亡くなってからしばらくは、かなり落ち込まれていたそうです。
しかし、数年たった今は、毎日畑に出て自分で家事をこなされ元気に過ごされているとのこと。

きっと、この週に一度の電話がその活力の源になっていると思います。

電話は、父にとって“会話の時間”であるだけでなく、誰かとつながっているという安心感そのもの。
孤独になりやすい高齢者にとって、定期的に話せる相手がいることは、精神的な支えとなり、生きがいにもなります。

一方で、彼女も「離れて暮らしていて何もできないけど、せめて声だけでも…」という気持ちで電話を続けているそうです。
その気持ちは、立派な介護のはじまりなのだと私は思います。

介護というと、手続きや介助のような“何かをしてあげること”をイメージしがちですが、「親を思う気持ち」「見守る姿勢」こそが、最初の一歩。

それがあるからこそ、親の変化に気づき、必要な支援につなげることができるのです。

介護は突然やってくる。でも前触れがある。

「介護について考えたことはなかった、親が倒れて初めてこと重大さを知った」「もっと早く気づいていれば」と話す方に多く出会います。

私は常々、「いざ」という時に備える準備の大切さを感じています。

介護は、ある日突然始まるように見えて、実は小さな予兆の積み重ねです。
それを見逃さずにキャッチできるのは、何よりも日常的なつながりなのです。

友人のように、週に一回の電話でも十分です。

大切なのは、つながっているということ。

定期的に親の様子を知ることで、緊急時にも冷静に対応できますし、何か気になる変化があれば、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談するタイミングを逃さずに済みます。

遠距離でもできることはある

「遠くにいるから何もできない」

そう感じる人は少なくありません。仕事の都合で実家に頻繁に帰れない人にとって、親の介護はプレッシャーでもあります。

しかし今は、介護保険の介護サービスを利用したり、最近ではICT技術を活用した見守り機器なども登場し、遠距離であっても親の支援ができるようになりました。

また、職場でも「介護休業」「介護休暇」「時短勤務」など、制度を活用すれば、仕事との両立も不可能ではありません。

でも、すべての始まりは、気にかけること
週に一度の電話のように、心を寄せる行動は、どんな制度やサービスよりも先にある、家族ならではのケアです。

思い合う気持ちが介護の土台に

友人の話を聞いて改めて思いました。

介護の始まりは、病気やケガだけではありません。つながっている時間が、親の心を支えている。
そして、支えたいと思う家族の気持ちもまた、介護の大切な一部です。

こうした「心のケア」こそが、親の介護の最も大切な土台になると感じています。

遠く離れていても、会えなくても、電話一本のつながりが親の生きがいになり、子の安心にもつながる。
それは、まぎれもなく介護の形の一つです。

だからこそ、私は、これからもこうした日常の中にある介護の姿を、多くの人に伝えていきたいと思います。

私は産業ケアマネとして、企業の経営者様及び人事担当者様、そして一般の方々を対象に介護セミナーを行っています。

また、企業向けに『仕事と介護の両立サポートプログラム〜介護する家族に寄り添う会〜』を提供し、仕事と介護の両立を目指す職場づくりを、企業のパートナーとして支援しています。
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最後まで読んで頂きありがとうございました。

投稿者プロフィール

辻 恵
辻 恵
産業ケアマネ2級
仕事と介護の両立支援コンサルタント養成講座 1期卒業生
ケアマネージャー歴 10年
社会福祉士
介護福祉士
保育士