介護離職を防ぐ職場の第一歩──会社に“もしも”を共有する仕組みとは?
「介護はある日突然始まる」。
この言葉を多くの方が聞いたことがあるかもしれません。けれど本当にそうでしょうか?
実際には、介護が必要になる“前触れ”は、少しずつ日常の中に現れています。
しかしそのサインに気づいても、職場に相談できず、気づいたときには限界…
そして「もう仕事は続けられない」と介護離職を選ぶ方が後を絶ちません。
このブログでは、産業ケアマネとしての経験をもとに、介護を“もしも”ではなく“そろそろかも”と捉える視点をお伝えしながら、
介護離職を防ぐために今できることを考えていきます。
介護は突然やってくる——準備していなかった人の共通点
介護が始まってしまってから、「もっと早く相談すればよかった」と後悔する人はとても多いです。
産業ケアマネとして関わった中でも、
「親が倒れて初めて“介護”を意識した」
「上司に迷惑をかけたくなくて、ギリギリまで言えなかった」
という声が頻繁に聞かれます。
でも、こうしたケースでも“予兆”はすでに現れていたことが多いのです。
- 以前より通院が増えた
- 忘れっぽくなってきた 怒りっぽくなってきた
- 実家の掃除が行き届かなくなっていた
- 同じものを買うようになっている
このような変化を「老化かな」で済ませてしまうと、備えるタイミングを逃してしまいます。
介護は“いきなりの出来事”ではなく、“じわじわと始まっている”という認識が大切です。
「突然」じゃなく「じわじわ始まる」介護——気づきを共有する“3つの小さな習慣”
✅ 習慣①:「ライフの変化」を定期的にメモする
親との関係で気になる変化があった時は、簡単にでもスマホや手帳に記録しておきましょう。
後から見返すと、「これは介護の入り口だった」と気づけることもあります。
「母がご飯を焦がすことが増えた…」
「実家の冷蔵庫の中がカラになっていた」
こうした変化が、じつは重要なサインなのです。
✅ 習慣②:職場の雑談で“家庭の変化”に軽く触れてみる
「最近、実家の父がちょっと心配でさ…」
そんな会話を日頃からしておくことで、いざという時に職場の理解や協力を得やすくなります。
✅ 習慣③:上司との1on1で小さく共有する
評価の話や業務進捗だけでなく、「週末は通院の付き添いが増えてきて…」といった私生活の変化も少し伝えるだけで、状況の共有ができます。
職場に「何かあったら相談してくれる人」という安心感を持ってもらうことが、後のサポートにつながります。
これらの小さな習慣は、「いきなり介護になったらどうしよう」から「そろそろかもしれないから相談しておこう」へと気持ちを変える助けになります。
会社側も事前に情報があれば、サポートの準備ができるのです。
企業にも“もしも”を備える意識を——産業ケアマネの役割とは
介護離職は個人だけの問題ではなく、企業にとっても重要な人材損失のリスクです。
- 中堅社員がいきなり退職
- 管理職が休職に追い込まれる
- 若手社員が介護を理由にキャリアを諦める
こうしたことが、実際に起きています。
企業が「備える組織」になるためには、従業員の“もしも”に耳を傾ける文化と支援体制が必要です。
その一つの手段が、産業ケアマネの活用です。
産業ケアマネは、社員一人ひとりの家庭状況に寄り添い、
- 介護保険制度の案内
- 介護サービスの情報提供
- 仕事との両立方法のアドバイス
など、職場と本人をつなぐ調整役として機能します。
職場内にこうした“相談できる存在”があることが、働く人の安心につながります。
【まとめ】
- 介護は“突然”ではなく、“じわじわ始まる”もの
- 日常の中での「小さな習慣」が、職場との共有と備えを促す
- 企業にも“もしも”に備える支援体制が必要であり、産業ケアマネの活用が鍵になる
介護のサインに気づいたその時こそ、行動のチャンスです。
あなたの働き方と人生を守るために、いまできる備えから始めてみませんか?
投稿者プロフィール

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大学卒業後、営業職・飲食業をへて介護業界へ。ホームヘルパー2級を取得後にグループホームでキャリアをスタート。
介護福祉士を取得し病院、ケアマネージャーを取得して老健・居宅支援事業所で働き、15年間の経験を元に、昨年7月株式会社介護屋ごとう、本年2月からはワントップパートナー札幌麻生店を設立。
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