両立支援の理解促進について考える。〜人事編〜

兵庫県で活動している 産業ケアマネ 片岡です。

仕事と介護の両立を支えるための制度の整備は進んできています。
でも——

・制度があるのに、使う人が少ない
・会社に相談する前に「退職」を決断してしまう従業員がいる。

そんな声を耳にすることも少なくありません。

制度が“ある”ことと、実際に“使える”ことは、別の話。
その間に横たわるギャップを埋めていくことこそが重要です。

両立支援は“戦略的人事”の一環である

仕事と介護の両立支援は、「人に優しい会社になるための施策」というだけではありません。
むしろ、人材確保と定着、現場の安定稼働、労務リスクの軽減、そして離職にかかるコストを抑える“戦略”的な施策です。

介護離職1件あたりにかかるコストは、採用・教育・戦力化の期間を含めると、数百万円規模になることもあります
介護の相談が早期にでき、働き方の選択肢が広がり、必要な時に制度も適切に使えれば、貴重な人材を失わずに済む。

産業ケアマネは、従業員一人ひとりの状況に応じて介護保険制度や地域資源の活用方法を伝え、業務への影響を最小限に抑える支援ができます。
それはつまり、「退職を防ぎ、会社の運営コストも守る支援」でもあるのです!

制度が“使える状態”をつくるために必要なこと

「制度が使われる」ために欠かせないポイントは、大きく二つあると考えています。

① 社内周知と全社的な実態共有

制度は、ただ「あります」と案内されただけでは、使用されていくことは難しいと考えます。
制度の”仕組み”だけでなく、「どういう場面で、どのように使えるのか」「実際に活用した人がどう働き続けられたか」といったリアルな事例を交えた情報発信が重要です。

介護を抱えた時、ビジネスパーソンの仕事や暮らしはどう変わっていくのか?
「介護適齢期」を迎えた従業員が、事前に「知っている」のと「まったく知らない」のとでは”介護を抱えても仕事を続けていく”という意識を持てるかどうかに大きな違いが出てきます。

周囲に伝わりづらい介護の悩みを、個人の問題で終わらせずに、組織として共有できる文化が必要です。

② 社内教育で“自分ごと化”を促す

従業員自身が「自分にもいずれ介護が訪れるかもしれない」と考えられるような学びの機会も大切です。
特に、若手層やミドル世代が、まだ“介護”を現実として捉えていない段階から、

  • 仕事と介護の両立とはどういうことか
  • どんな壁があって、どう備えればいいのか

を知っておくことが、将来の行動を変えます。

介護に直面したときに必要なのは、「退職しないための面談」

いざ家族の介護が始まったとき、従業員の働き方を考える場面が訪れます。
このとき、形式的な制度説明や一律の手続き案内だけでは、支援としては不十分です。

なぜなら、介護は「誰にでも当てはまる正解」がないからです。

たとえば、介護が必要となった家族の病状や認知機能、介護の必要度、同居か別居か、どのくらい離れて暮らしているか——
そうした病状や住まい、家族構成などを含めて、一人ひとりの状況が大きく異なります。

この個別性の高い状況に対して、本人の話をしっかり聞き取りながら寄り添わなければ、
本当に必要な支援や、続けられる働き方にはつながっていきません。

必要なのは、個別の状況に寄り添った
「”介護を抱えても働き続けられる”と従業員が思える面談」です。

例えば、

  • どんな介護がどの程度必要で、それが家族の生活にどんな影響があるのか
  • どんな介護の制度や地域資源が使えて、それによって家族の支援がどうなっていくのか
  • どのような働き方の選択肢があるのか

といった情報を丁寧に共有しながら、働き方(仕事)と生活(介護)の両立を支える面談こそが、離職を防ぐ大きな鍵になります。

産業ケアマネの活用が、現実的な支援につながる

こうした支援を、人事がすべて担うのは簡単ではありません。
だからこそ、**介護の視点を持つ専門職「産業ケアマネ」**をパートナーとして活用することが、有効な選択肢になります。

産業ケアマネは、介護保険や地域資源に精通し、従業員と面談しながら仕事と介護をどう両立するかを一緒に考えることができます。

結果として、

  • 早期相談がしやすくなる
  • 制度の適切な活用が進む
  • 人事や管理職の対応負担が軽減される

といった相乗効果が生まれます。

人事の取り組み+産業ケアマネ=“仕事を続けられる”組織づくり

少子高齢化、労働力人口の減少、多様化する働き方——この先、企業は「働きたい人に、長く働いてもらう」ための工夫がますます必要になります。
その時に鍵を握るのが、介護や育児、病気など“個々の事情”を考慮した制度と社内風土の醸成です。

「ここなら事情があっても働ける」
従業員にそう思ってもらえる会社は、これからの時代において間違いなく強い。
そしてその“安心の仕組み”を整えるために、人事が担う役割はますます重要に。
そこに、産業ケアマネという専門職が加わることで、制度設計から実際の活用まで、より実効性のある支援が可能になります。

人事の「周知・教育・体制整備」と、産業ケアマネによる実践的な支援。
仕事と介護の両立支援において、この連携こそが、従業員の「働きたい」と会社の「続けてほしい」を両立させる近道です!

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私、産業ケアマネ 片岡
主に兵庫県の企業様を対象に「仕事と介護の両立支援明石事務所」を運営しています。
社内セミナーや社内実態調査、介護に直面する従業員への個別面談などを通じて仕事と介護の両立を支援
社会問題「介護離職」の防止につなげます。
企業代表者様、人事担当者様、お気軽にお問い合わせください!

mail:ryoritsuakashi@gmail.com
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投稿者プロフィール

片岡芳美
片岡芳美
産業ケアマネ2級
仕事と介護の両立支援コンサルタント養成講座 2期卒業生
介護業界21年
社会福祉士/介護支援専門員
仕事と介護の両立支援明石事務所 2024年11月開設