「誰も教えてくれなかった老後」90代男性の実体験から学ぶ“本当の備え”
「夫婦で支え合うつもりだった」――サ高住入居から始まった介護の現実
「まさか、自分たちにこんなに早く“施設からの退去”がくるなんて思ってもみなかったんです」
これは、現在90代の男性が語ってくれた実体験です。
80代のときに奥様が認知症を発症し、身体介護も必要となり、夫婦でサービス付き高齢者住宅(サ高住)に入居されました。
当時は「これで夫婦で安心して暮らせる」と思っていたそうです。
しかし、奥様の認知症が進行すると、施設側から「対応が難しい」と転居を求められます。
次の施設でも「別々の部屋が望ましい」と勧められたにもかかわらず、夫婦で一緒にいられるよう、あえて“夫婦部屋”を選びました。
けれど、その選択は想像以上に厳しいものでした。夜中に毎晩起こされ、わずか1週間で「自分の心が壊れてしまう」と、再びの転居を決意します。
「心の準備も、情報の準備も足りなかった」――想定外の出来事が次々に
3件目の施設では、夫婦は別々の部屋で暮らすようになりました。やっと安定した生活が送れるかと思った矢先、奥様が施設内で転倒・骨折。
数か月の入院で回復するはずが、認知症が急速に進行し、そのまま亡くなってしまいます。
その数か月後、ご本人にもがんが見つかり入院。現在は多床室での療養生活を送っています。
認知機能はしっかりしているものの昔のようには身体が動かない。周囲に認知症患者が多く、日々の言動に強いストレスを感じているとのこと。
「年を取ってから、こんなことになるなんて誰も教えてくれなかった」
「早く迎えが来ないかな」――
そう語る姿に、老後に必要な備えとは“お金”だけではないと、あらためて考えさせられました。
老後に本当に必要な備えとは?――自分も家族も後悔しないために
この男性の体験から、私たちが学ぶべきことはたくさんあります。
- 老後の住まいは“終の棲家”ではなく、状況に応じて何度も変わることがある
- 認知症はゆるやかに、しかし確実に進行し、周囲の生活に大きな影響を与える
- 夫婦で支え合いたくても、どちらかが限界を迎えると「共倒れ」になるリスクがある
- 介護が終わった後も、自分自身の健康と生活が続いていく
だからこそ、早いうちから「知ること」「話し合うこと」「頼れる先を持つこと」が重要です。
産業ケアマネとして私は、職場でも家庭でも、介護を「自分ごと」としてとらえるきっかけを提供しています。
このブログを読んで、「まだ元気だから…」と思っている方にも、ぜひ考えてほしいのです。
老後に訪れる変化は、突然やってきます。でも、「知っていれば」「準備していれば」選べる未来は変わります。
投稿者プロフィール

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大学卒業後、営業職・飲食業をへて介護業界へ。ホームヘルパー2級を取得後にグループホームでキャリアをスタート。
介護福祉士を取得し病院、ケアマネージャーを取得して老健・居宅支援事業所で働き、15年間の経験を元に、昨年7月株式会社介護屋ごとう、本年2月からはワントップパートナー札幌麻生店を設立。
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