「仕事と介護、どちらもあきらめないために──保険外サービスの力を味方に」

介護離職を防ぐためには、制度や仕組みを知っておくことが何よりの備えになります。
今回は、介護保険外サービスの活用が、仕事と介護の両立にどう役立つのかをお伝えします。

「介護」と聞くと、排せつ介助や食事介助などの「身体介護」をイメージしがちですが、実は家族が担っている“介護的な役割”にはもっと幅広いものがあります。
保険外サービスを上手に活用すれば、「やらなくてもよい介護」を減らし、「家族としての関わり」に集中できるのです。

「介護=身体介護」だけではない。実は多い“名もなき介護”

親が要介護状態になったとき、多くの方が「自分がやらなきゃ」と思ってしまいます。
でも実際には、

  • 通院の付き添い
  • 日用品の買い物
  • ゴミ出し・掃除・通帳の管理
  • 電球の交換や鍵の開け閉めなどのちょっとした手伝い
    といった、“介護”と名のつかない日々の支えが積み重なっていきます。

これらは介護保険の対象外であることが多く、誰かが担うしかありません。
そして、こうした“名もなき介護”が仕事との両立を困難にしているケースが非常に多いのです。

保険外サービスを活用した「両立支援」の事例紹介

「ちょっとしたこと」が、こんなに助かるなんて思いませんでした

50代の会社員で、母と2人暮らしをしています。
母は要支援2で、体はまだ動くけれど、最近は物忘れが増えてきて、冷蔵庫の中身が把握できなかったり、同じ物ばかり食べていたりして、少しずつ生活に不安を感じるようになっていました。

仕事から帰ってくると、買い物、簡単な調理、母の薬のチェック……。
「仕事のあとは介護が待ってる」という毎日で、だんだん心にも余裕がなくなってきていました。

そんなときに出会ったのが、保険外サービスでした。
週に3回、生活支援のスタッフさんが来てくれて、買い物をしてくれたり、簡単なご飯を作ってくれたり、母と世間話をしてくれたり。
その様子をあとで教えてもらえるので、離れていても安心感があるんです。

このサービスを利用してから、「全部自分でやらなきゃ」という思い込みが少しずつ和らいでいきました。
私自身の気持ちにも余裕ができて、母とも笑顔で話せる時間が増えたように思います。

介護って、「重たいこと」だと思っていたけど、ちょっとしたサポートをお願いするだけで、家族の関係まで変わるんだって、気づかせてもらいました。

産業ケアマネがつなぐ「制度のすき間」を埋める力

介護保険ではまかないきれないニーズ――
ちょっとした困りごとにこそ、保険外サービスは力を発揮します。

産業ケアマネは、仕事と介護の両立に向けて、
✅ 本人・家族の状況をヒアリング
✅ 利用できる制度や保険外サービスの紹介
✅ 職場と本人をつなぐコミュニケーションの調整
などを通じて、「あきらめなくていい介護のかたち」を一緒に探します。
「全部自分でやらなくていい」という選択肢を持つことで、心も時間も余裕が生まれます。

まとめ

  • 介護=身体介護だけではない。見守り・家事・買い物なども立派な“支援”
  • 保険外サービスの活用で、家族の負担は減らせる
  • 産業ケアマネが間に入り、制度のすき間を埋める提案ができる

「介護を家族がすべて担う必要はない」ということです。
仕事との両立を目指すなら、“やらなくてよい介護”を手放す勇気と仕組みづくりも重要です。
介護保険外サービスの活用は、介護離職を防ぐための“新しい選択肢”となり得ます。

プロに任せられるところは任せて、“家族としての関わり”を大切にしていきましょう

投稿者プロフィール

後藤利英
後藤利英
大学卒業後、営業職・飲食業をへて介護業界へ。ホームヘルパー2級を取得後にグループホームでキャリアをスタート。
介護福祉士を取得し病院、ケアマネージャーを取得して老健・居宅支援事業所で働き、15年間の経験を元に、昨年7月株式会社介護屋ごとう、本年2月からはワントップパートナー札幌麻生店を設立。